新型コロナウイルス抗体検査とは、新型コロナウイルスの抗体が血液中に含まれるかを調べるものです。

抗体とは

抗体とは生体の免疫反応により体内で作られるもので、細菌やウイルスなどを捕まえて排除するタンパク質です。抗体には様々な種類がありますが、ウイルス感染症の場合には主に感染早期に現れる“IgM”とIgMより遅れて作られて長期間にわたり続く“IgG”が現れます。

国立感染症研究所がPCR検査陽性の新型コロナウイルス感染症患者の血液を用いて“IgG抗体”の検出率を調べたところ

   発症7-8日後は25%
   発症9-12日後は約52%
   発症13日以降は約97%     でした。

すなわち、発症直後に抗体を測定しても検出されないかたが多いので、新型コロナウイルス抗体検査が陰性であっても発症して2週間未満であれば新型コロナウイルスの感染ではないとはいえないのです。

一方、発症してすぐに陽性になるのがPCR検査です。PCR検査はウイルスの遺伝子を増幅し測定するので、発症してウイルスが増えている場合には陽性となります。しかしながら、報道でわかるようにPCR検査はなかなか受けることが出来ず、手続きも煩雑で時間も要するのが現状です。

不顕性感染と集団免疫

不顕性感染(無症状感染)とは感染しても発症していない状態のことをいいます。新型コロナウイルス感染症では無症状の人が多いといわれ、米国の原子力空母セオドア・ルーズベルトの乗員4800名のうち600名あまりが感染しましたが、そのうち60%は無症状だったそうです。

抗体検査が広く行われるようになれば、PCR検査で実際に診断を受けたかた以外に、診断されていない(主に無症状~軽傷者の)感染者の割合が判るようになり、新型コロナウイルス感染症への戦略と対策がたてられるようになると思います。

ここで集団免疫という考えが出てきます。集団免疫とは『ある感染症に対して多くの人が免疫を持っていると、免疫を持たない人に感染が及ばなくなる』という考えで、人口の60%以上に免疫があれば感染拡大を抑えることが出来るといわれています。流行当初、イギリスのジョンソン首相は集団免疫を念頭に緩やかな行動制限を求めていましたが、感染拡大が著しくなり、このままではイタリアと同じような転帰をとり医療崩壊を招くことが避けられないと考え、強力な行動制限を行うように方針を転換しました。

ところで、インフルエンザワクチン予防接種を受けないかたが結構います。多くのかたは『ワクチンを接種してもインフルエンザにかかってしまうから』とか『インフルエンザにかかっても薬があるから痛い思いをしたくない』などの理由をつけて受けていないと思います。ここで集団免疫という考えかたが出てきます。すなわちワクチン接種を受けたくても受けられないようなかたを救うために、周りの人たちが免疫をつけて流行を抑えることが出来るのです。

国内での新型コロナウイルス感染症の抗体検査の事例を挙げると、4月の報告で神戸市立医療センター中央市民病院では外来患者1000人の血液を検査して33人の抗体を持ち、大阪市立医大では312人の血液を検査して3人が抗体を持っていました。一方、アメリカ合衆国最大の感染地となったニューヨーク州が4月に3000人を対象に検査を行ったところ、約14%が陽性との結果が出ました。6月から厚生労働省が10000人規模の抗体検査を行うと報道されました。検査キットの精度の問題はあるが、多くのデータを集めることで外出自粛の実施や解除の判断材料になれば良いと思います。

抗体検査が陽性ならば、新型コロナウイルス感染症に対する免疫が出来ているの?

中国では感染歴のある人の血液を治療中の患者に輸血したところ、感染症状の改善効果がみられたと報告されました。テレビでおなじみのナビタスクリニックの久住医師がこれについて『病気によって抗体でウイルスを無力化できるタイプと無力化できないタイプがあります。必ずしも、抗体がある=感染しないと言い切れません。ただ新型コロナウイルス感染症は、おそらく無力化できるタイプだと考えられています。』と述べています。また、

『抗体があれば絶対に感染しないとまで証明されたわけではありませんが、免疫が獲得できている可能性は高い』と述べています。

当院での新型コロナウイルス抗体検査について

そこで、当院では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、新型コロナウイルス抗体(IgG/IgM)検査(試験研究用)を6月より行います。

当院ではBiolidics社の2019-nCoV(IgG/IgM)キットを使用しています。他社との比較は出来ませんが感度91.54%、特異度97.02%、正確度95.09%と精度が高い検査となっております。

当院で行っている検査は新型コロナウイルス抗体検査です。PCR検査や抗原検査ではありませんので発熱やせき、嗅覚・味覚異常などのあるかたは検査が出来ません。くれぐれもお間違えのないようにして下さい。

在庫に限りがあり、お申し込みが殺到しており電話による事前予約を行っています。

この検査は保険適応外で料金は初診料を含めて\8,000(税込み)です。

当日の流れ

  • 予約の日時に来院して下さい。(時間はあくまでも目安ですので診療の状況により待っていただくこともあります)
  • 診察の受付および質問票の記入をお願いします。(質問票ダウンロード)
  • 診察室で問診を行います。
  • 採血を行います。
  • 10分ほどで結果を説明します。
  • 会計をして終了です。

抗体検査結果の解釈について

  • 新型コロナウイルスには「S型」、「K型」、「G型」の感染力や毒性の異なる3つの型のウイルスの存在が判っています。また変異を繰り返しているため、抗体が陽性だからといって二度と感染しないわけではありません。
  • 抗体検査キットには感度・特異度・正確度についての記載がありますが、どの時期の新型コロナウイルス感染症患者の検体を用いられて検証が行われているかについては不明です。

最後に

まだまだ見えない敵との戦いは続きます。先日、安倍首相が言っていたように身体的距離の確保や手洗いの徹底などの『新しい生活様式』を行い、感染の可能性を少なくしながら社会生活を少しずつ取り戻していく必要があります。これはどうしよう…あれはどうしよう…と上手くつきあっていく方法を模索していってほしいと思います。